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Blu-rayマスター全話一挙上映イベントのレポートをお届け!

8月7日、TOHOシネマズ六本木ヒルズにてTVアニメ『月がきれい』のBlu-rayマスター全話一挙上映イベントが開催された。
まるで昭和の文学作品のような、中学生同士の淡くて純粋な恋を描いた本作品は、今年4月の放送から瞬く間にアニメファンの心を掴み、大きな話題を呼んだ。その美しい世界観を支えていたのは、舞台となる川越市を徹底的にリアルに描いた背景美術と、プレスコ(芝居を先に収録し、その台詞に合わせて作画する手法)によって生み出されたほんの微細な息遣いも逃さないアニメーション描写だった。
9月27日に発売されるBlu-ray Disc/DVD BOXでは、これらの映像にいくつものリテイクが重ねられ、さらなるクオリティアップがなされたという。今回のイベントはその完成祝い。さらにこの日は主人公・安曇小太郎の誕生日ということもあり、観客は二重の喜びのなか、劇場の大スクリーンに映し出される『月がきれい』を今か今かと待ちわびていた。

というわけで、上映会は18時30分よりスタート。するといきなりサプライズが待っていた。安曇小太郎役の千葉翔也から、ビデオメッセージが届けられたのだ。作品の感想や放送中の反響に触れ、ファンに感謝を述べる千葉。そしてBlu-rayマスター版への期待を煽ると、いよいよ本編が再生された。

さて、『月がきれい』がTV版と比べてどのように進化したのかは、ぜひその目で確かめてほしい。一足早くBlu-rayマスター版を体験した観客は、終始食い入るようにスクリーンを見つめながら、「うん、うん」と作品を堪能しているようだった。

そして第6話までの上映が終わると、お待ちかねのトークコーナーへ。OPテーマの「イマココ」が流れ司会の南健プロデューサーが登壇すると、さっそく本日のゲストである水野茜役・小原好美、水野彩音役・前川涼子、監督・岸誠二の3人が招かれた。

 

開口一番、岸監督が今回のリテイクの“本気度”を語る。
「O.A.終了後から1ヵ月で全12話分のリテイク。この作品は1話あたりの平均カット数がだいたい320なのですが、今回のBlu-rayマスター版では500以上も直しています」(岸)
南プロデューサーは「胸を張って言うことではないんですが」と苦笑いしていたが、岸監督にとっては満足いく作品づくりができたとのこと。「直したところに気づきましたか?」(岸)という質問にも観客から反応があり、「やったかいがあったな」(同)と胸をなでおろしていた。
そして話題は初の姉妹登壇となった小原と前川へ。ここでは父(水野洋役・岩田光央)と母(水野沙織役・斎藤千和)も含めた水野家のシーンについて、ちょっとした裏話が披露された。
「私、水野家の食卓の空気感がすごく大好きで。収録のときも私が小声で言った“いただきまーす”のイントネーションを斎藤さんが拾ってくれたりして、本当の親子みたいな雰囲気が作れたなと思っています。ほんといい家族ですよね、水野家は。茜はお父さん似で、彩音はお母さん似かな?」(前川)

 

「家族の会話もそうだし、私は2人の部屋でおねえちゃんと話すシーンも楽しかったです。“ん?”ってイラッとする掛け合いとか、小太郎くんと話すときとは明らかに違う、家族の中でもおねえちゃんにしか見せないような表情が出せたのかなと。私、この作品をきっかけに、前川さんのことをリアルでも“おねえちゃん”と呼ぶようになったんですよ(笑)」(小原)

ちなみにこの水野家、全体の収録現場にはいつも小原、前川、斎藤の3人しかおらず、父役の岩田は別録りだったとか。
「収録の上では水野家は仮面夫婦のような状態だったのですが(笑)、毎回そんなことを感じさせない演技でいい空気を作ってくれました。斎藤さんと岩田さんのあの軽妙なやりとりはお互いの無茶ぶり(アドリブ)の中から生まれたものも多く、その生っぽさにはいつも私も驚かされていました」(岸)
そしてトークの最後には、Blu-ray Disc/DVD BOXに同梱される特典CDについてもほんの少しのネタバレが。
「45分ほどのオーディオドラマを作らせていただきました。本編では描かれなかった時間のひとつで、初詣での話が描かれています」(岸)
「すごくドキドキする話です。ちょっといいのかな? と思うくらいのシーンもあって……」(小原)
「おねえちゃんとしても妹が心配になるくらいの内容だよね(笑)」(前川)

 

こうしてトークも終了し、大きな拍手でゲストが送り出されるとイベントは後半戦へ。「リテイクは後半のほうが多い」(岸)という第7話から最終話までが上映された。小太郎と茜の状況が目まぐるしく遷り変わり、キュッと心が締め付けられるシーンが連続する終盤。気がつけばもう、時刻は24時を過ぎていた。

改めて、『月がきれい』Blu-ray Disc/DVD BOXは9月27日に発売される。この日、満足そうな表情を浮かべて劇場を後にした観客たちと同じように、本作品に詰まったたくさんの幸せを、多くの人に体験してもらいたい。
(写真・文章:西原史顕)